半年間大切な瞬間を1枚ずつ撮ったフィルムカメラの話

「もしもしー」
「あ、カメラのキタムラです。カゼハヤ様でお間違いないでしょうか?」
「はい、そうです〜!お世話になっております!」
「お世話になっております。先ほど現像ご依頼されたフィルムなんですが…あの…」
「どうかされましたか?」
「現像したら…あの…真っ黒で…」
「えっ」

「ぜ…全部ですか?」
「は、はい…全部…」
半年前マニュアルのフィルムカメラを譲ってもらって、
スマホみたいに何枚も連写できないからこそ1枚の重みがあるのが良いんですよね!
大切な瞬間だけ1枚ずつ撮ります!
と意気揚々と宣言し、36枚撮り切ること半年。
どんな瞬間にシャッターを切ったか鮮明に覚えている。
おばあちゃんとおじいちゃんの背中とか、滅多に撮らない家族写真とか、適応障害療養中に外に連れ出してくれた友達とか、友達とか、友達とか…
「ま、真っ黒ですか?」
「あのっ…かすかに透けてるとか…それもないですか?」
「ない…ですね…はい…」
大切な36枚の瞬間
真っ黒でした。
絶望のあまり、何も言えねぇ
スマホの写真が消えるのとは訳が違う。
どこにもバックアップがないし
私の脳内でしか再生できない
念写で現像できるのなら10万円くらいお金積みたい気分だ。(もっと価値あるか)
でもそこで大切な事に気づく。
写真には残ってないけど
脳内で再生できる大切な瞬間って
めっちゃ素敵じゃない?
実は大切な瞬間だったのに、その時は当たり前で大切だとは気づいていなくて
後々気づくけど思い出せないみたいな。
そんなことあるじゃない?
あれ、涙出てきた。
でもフィルムカメラのおかげで、
1枚だけ撮るって決めたおかげで
その瞬間が大切なんだよって自覚できたんじゃない?
そしてそれが真っ黒だったおかげで
失ったおかげで
どれだけ心に残ってたか…
気づけたんじゃない?
真っ黒でよかった…
なんて思えるかァァ!
P.S.電池変えるの忘れてました(完全に私のミス)










